押入れのふすまは外していい?|賃貸での判断と外した後の保管・目隠し
押入れのふすまを外すとき、先に考えるべきなのは取り外し作業よりも、退去時まで傷めずに保管し、元の位置へ戻せるかです。外しただけで直ちに原状回復費用が生じるとは限りませんが、保管中に襖紙を破る、日光で変色させる、湿気で傷めるといったことがあれば、借主負担を検討される可能性があります。
特に注意したいのは、国土交通省のガイドラインで、襖紙にはクロスのような経過年数による負担割合の減額を当てはめない考え方が示されている点です。長く住んでいたから負担が小さくなる、と単純には考えられません。
ふすまとは、木などで組んだ骨組みに紙や布を張り、和室や押入れの間仕切りとして使う建具です。この記事では、押入れのふすまを一時的に外して室内で保管し、退去時に戻す場合を扱います。処分する場合や、建具枠を加工する場合は前提が変わります。
なお、原状回復の扱いは契約内容や物件の状態によって異なります。この記事は国土交通省のガイドラインにある一般的な考え方を整理するもので、個別の契約に対する法的助言ではありません。契約書の特約と管理会社への確認が優先です。

賃貸で押入れのふすまを外していいかは何で決まる?
契約書の特約、退去時に戻せる状態、管理会社の回答の3点で判断します。 「穴を開けないから自由に外せる」と考えず、備え付けの建具を預かっている意識で扱うことが大切です。
まず契約書の特約を確認する
契約書では、原状回復に関する特約だけでなく、設備や建具の取り扱い、模様替え、貸主への事前連絡について書かれた部分を確認します。ふすまの取り外しを名指ししていなくても、備え付け設備の変更や移動に承諾が必要とされている場合があります。
見る場所は次のとおりです。
- 原状回復や退去時の復旧に関する条項
- 備え付け設備や建具の変更・移動に関する条項
- 模様替えや室内変更の事前承諾に関する条項
- 借主の故意・過失による破損の負担に関する条項
- 入居時の設備一覧や室内状況確認書
契約書だけでは該当箇所を判断しにくい場合があります。そのときは、自己判断で外してから報告するのではなく、管理会社へ先に確認します。「押入れのふすまを外し、室内で保管して、退去時に戻したい」と具体的に伝えると、処分や恒久的な改造ではないことも伝わります。
退去時に同じ状態へ戻せるかを考える
外してよいかを考えるときは、取り外せるかだけでなく、外したふすまをどこへ置くかまで一組で決めます。保管場所がないまま外すと、壁へ無理に立てかける、家具の裏へ押し込む、ベランダや結露しやすい場所へ置くといった傷みやすい保管になりがちです。
次の条件を満たせないなら、外さない選択も現実的です。
- 退去まで処分せずに保管できる
- 直射日光や結露を避けられる
- 人や家具がぶつかりにくい
- 襖紙へテープや粘着材を直接貼らずに管理できる
- 上下・表裏・左右の位置を後から判別できる
- 退去時に元の敷居と鴨居へ戻せる見込みがある
服を掛けるために開口部を広く使いたい場合でも、ふすまを外すことと、押入れ内部へハンガーパイプなどを設置することは別の判断です。押入れをクローゼット化する方法と設置方式の違いも確認し、建具と内部の収納設備を分けて考えてください。
判断に迷ったら管理会社への事前確認を優先する
契約書に明記がないことは、自由にしてよいという意味ではありません。管理会社へ確認するときは、電話だけで終わらせず、メールや問い合わせフォームなど回答が残る方法を選ぶと、退去時に経緯を説明しやすくなります。
伝える内容は短くて構いません。
- 対象は押入れのふすまであること
- ふすまは処分せず室内で保管すること
- 建具枠や壁へ穴を開けないこと
- 退去時に元へ戻す予定であること
- 指定の保管方法や注意事項があるか
管理会社から条件が示された場合は、その条件を優先します。外してよいか、破損時にどこまで負担するかは物件ごとに判断が分かれるため、契約書の特約と管理会社への確認が最優先です。
外したふすまを傷めずに保管するには?
直射日光と結露を避け、面へ荷重をかけず、安定した場所へ立てて保管します。 退去時の原状回復を考えるなら、外した瞬間より、保管している期間のほうに注意が必要です。

保管場所は日差し・湿気・生活動線から離す
襖紙は広い面を持つため、窓際へ置くと一部分だけに日が当たりやすくなります。結露する窓や外壁の近く、洗濯物を干す場所のそばも避けます。押入れから外した結果、別の場所で湿気や日差しを受け続けては意味がありません。
候補にしやすいのは、室内の壁際で、次の条件を満たす場所です。
- 直射日光が長時間当たらない
- 窓や外壁の結露に触れない
- エアコンの風が一方向から当たり続けない
- 椅子、掃除機、荷物の出し入れがぶつからない
- 子どもやペットが押し倒しにくい
- 避難や日常の通路を狭めない
部屋全体に結露や湿気が出やすい場合は、ふすまの保管場所だけでなく、結露とカビを防ぐ部屋の湿気対策も合わせて見直します。ふすまを外すと押入れの開口部が常に開くため、押入れ内の空気の動きも変わります。ただし、開放しただけで湿気の問題が解消するとは限りません。
寝かせるより立てて、面に物を載せない
ふすまは広い面を持つ建具です。床へ寝かせると上へ物を載せやすくなり、面へ荷重がかかります。保管場所を確保できるなら、長辺ではなく本来の上下が分かる向きで立て、倒れないよう安定させるほうが反りや圧迫を避けやすくなります。
ただし、壁へ斜めに大きく傾けるだけでは倒れるおそれがあります。床との接点と壁側の接点に、色移りしにくい清潔な布や緩衝材を置き、角だけへ力が集中しないようにします。襖紙へテープを直接貼ったり、ひもを強く食い込ませたりしません。
複数枚を重ねる場合は、次の順で整えます。
- 外す前に、左右・表裏・上下が分かる記録を残す
- 表面のほこりを乾いた柔らかい布などで軽く払う
- ふすま同士の面が直接こすれないよう緩衝材を挟む
- 金具や引手が隣の襖紙へ当たらない向きにそろえる
- 一番外側の面にも物を立てかけない
- ときどき傾き、湿気、変色、虫害がないかを見る
記録は、ふすま本体へ粘着物を貼らず、外す前の写真とメモで残す方法があります。「押入れに向かって左」「室内側」「上」といった位置関係を記録しておくと、戻すときに向きを推測せずに済みます。
「戻らない」はふすまだけでなく建て付けも確認する
ふすまを保管していれば、建具そのものを戻す準備はできます。ただし、長期間外したあとに動かしにくい場合、原因が襖紙だけとは限りません。敷居の溝にほこりや異物がたまっている、ふすまが反っている、室内の湿気で建具の状態が変わっているなど、複数の可能性があります。
戻すときに入りにくくても、強く押し込んだり、削ったり、金具を加工したりしないでください。まず上下と表裏が合っているか、敷居と鴨居に異物がないかを確認します。それでも戻しにくい場合は、建具や物件側の状態を管理会社へ伝えます。
外した状態を長く続けるなら、退去直前まで放置せず、保管状態と戻すための空間を途中で見直すほうが安心です。ただし、実際に戻して建て付けを確かめるかどうかは、ふすまや枠を傷めないことを優先し、無理がありそうなら管理会社へ相談します。
国土交通省のガイドラインでは負担をどう考える?
外す行為と、保管中にふすまを傷める行為は分けて考えます。 ガイドラインが具体的に示しているのは、襖紙などを毀損した場合の費用負担と、その負担単位です。
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」には、襖紙などについて次の記載があります。
襖紙や障子紙、畳表といったものは、消耗品としての性格が強く、毀損の軽重にかかわらず価値の減少が大きい ため、減価償却資産の考え方を取り入れることにはなじまないことから、経過年数を考慮せず、張替え等の費用 について毀損等を発生させた賃借人の負担とするのが妥当
出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(確認日:2026年9月1日)。
「経過年数を考慮しない」とはどういう意味?
この記載は、古いふすまなら傷めても問題にならない、という意味ではありません。クロスは古くなるほど借主が負担する割合を下げて考える枠組みがありますが、襖紙や障子紙は同じように価値を年数で減らす考え方になじまない、とされています。
そのため、借主が保管中に襖紙を破ったり、汚したり、変色させたりしたと判断された場合、居住年数を理由とした減額を期待しにくく、張り替え等の費用を負担する可能性があります。発注時点から古かったことと、自分が新たな毀損を生じさせたかどうかは別の論点です。
一方、ガイドラインは、特に破損していない部位を次の入居者確保のために取り替える工事を貸主負担側の例として整理しています。退去時に張り替えや手直しが行われるという事実だけで、借主負担になるわけではありません。借主の負担を考える場面では、保管中に生じた毀損なのか、次の入居者確保のための通常の手直しなのかを分ける必要があります。
ふすまの負担は何枚単位で考える?
ガイドラインは、借主が原状回復費用を負担する場面での単位についても考え方を示しています。襖は原則として1枚単位で計算し、毀損が複数枚にわたる場合はその枚数分、色や柄をそろえる必要がある場合は居室全体の枚数を単位とする考え方です。柱は1本単位です。いずれも経過年数は考慮しません。
出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(確認日:2026年9月1日)。

押入れのふすまを外す場面では、**「外したか」だけでなく「どの1枚を、どの状態で保管したか」**が重要になります。複数枚を重ねて保管し、引手や縁で隣の襖紙を傷つければ、影響が一枚に収まらないことも考えられます。外す前の写真と位置の記録は、枚数と状態を説明する材料になります。
ガイドラインは個別の契約へ一律に結論を出すものではありません。破損時の負担も、契約書の特約、入居時の状態、実際の傷み方などで判断が分かれます。契約書の特約と管理会社への確認が優先であり、争いがある場合の個別判断は専門家への相談が必要です。
賃貸の原状回復を、壁の穴や粘着跡も含めて整理したい場合は、賃貸の壁を使う前に見る原状回復の判断表も参考になります。ふすまの代わりに目隠しを取り付けるときも、建具とは別に壁や枠へ跡を残さないかを確認します。
外した後の目隠しはどの方式を選ぶ?
開閉のしやすさだけでなく、断熱、ほこり、取り付け跡、設置の手間を並べて選びます。 ふすまを外しても、代わりの目隠しを付ける方法によっては壁や枠への負担が増えるためです。
| 方式 | 断熱への影響 | ほこり・手入れ | 原状回復への影響 | 設置の手間 |
|---|---|---|---|---|
| カーテン | 開口部を覆えるが、上部や側面に隙間が残りやすい | 布にほこりが付きやすい。取り外して手入れできる素材か確認 | 穴を開けない設置でも、突っ張る面のへこみや器具跡を確認 | 幅と丈を測り、開閉方向と固定方法を決める |
| ロールスクリーン | 一枚面で覆いやすいが、周囲の隙間は残る | 面は整えやすいが、巻き取り部や上部にもほこりがたまる | 固定方法によっては穴や跡が残る。契約条件を先に確認 | 採寸に加え、巻き上げる位置と操作側の空間が必要 |
| のれん | 開口部を部分的に覆うため、隙間が大きい | 取り外しやすいが、布の手入れは必要 | 軽い器具で設置しやすいが、枠への圧力や跡は確認 | 丈と透け方を選び、軽い支持方法を決める |
| 何もしない | 開口部を覆わない | 中へほこりが入りやすく、収納物も含めて掃除が必要 | 追加器具による壁や枠への影響は生じない | 設置は不要だが、見える収納へ整える手間がある |
この比較は、特定の商品を順位付けするものではありません。押入れの用途、部屋からの見え方、賃貸で許される固定方法によって合う方式が変わります。
カーテンは開閉しやすいが、支持する場所を確認する
カーテンは左右へ寄せられるため、押入れの端から端まで使いたい場合に動線を作りやすい方式です。一方で、布の重さを何で支えるかが問題になります。突っ張り式を使う場合も、枠の強度、設置幅、器具の対応条件、取り付け跡を確認します。
床まで長くすると掃除の邪魔になり、短いと下側から中身が見えます。見た目だけで丈を決めず、下段の引き出しや収納ケースを動かしたときに布を巻き込まない長さを考えます。
ロールスクリーンは正面を整えやすいが、固定方法が分かれる
ロールスクリーンは上へ巻き上げるため、左右へ布だまりを作りたくない場合に候補になります。ただし、取り付け部へ力が集まりやすく、穴を開ける方式と開けない方式を同じ条件では扱えません。賃貸では、製品を選ぶ前に、管理会社が認める固定方法かを確認します。
巻き上げた本体が鴨居や天井、押入れ上部の荷物と干渉しないかも見ます。操作用のひもやチェーンが収納物に絡まない位置を選び、開けたときの高さも確保します。
のれんは隠す範囲を限定する方式
のれんは、押入れ全体を閉じるというより、視線が集まる高さを部分的に隠す方法です。通気のために開口を残したい場合でも、下段や上部は見えることがあります。どこから見たときに何を隠したいかを先に決めます。
布が短く軽いぶん設置は簡素にしやすいものの、支持する器具が枠へ与える影響は別に確認が必要です。穴を開けない器具でも、強く突っ張れば跡やへこみが残らないとは言い切れません。
何もしないなら「見せる収納」へ切り替える
目隠しを付けない方法は、追加器具による壁や枠への影響を避けられます。その代わり、押入れの中身が室内の景色になります。収納量だけを優先して色や形の違うケースを詰めると、ふすまを外す前より散らかって見えることがあります。
また、開放すれば湿気がなくなるとは限りません。部屋側の湿度が高ければ、押入れの中にもその空気が入ります。ふすまを外すことを、換気や除湿の代わりにしないでください。
外した後に押入れの中身が丸見えになるときは?
収納ケースを「入る物」だけでなく「外から見えても管理しやすい物」として選び直します。 ただし、見た目をそろえる前に、押入れの内寸と取り出す動作を確認する順番は変わりません。
まず、室内から見える範囲を三つに分けます。
- 目線に近い上段:日常的に使う物を、用途が読み取れる単位でまとめる
- 腰より下の下段:引き出す物や重い物を置き、床との接点を掃除できるようにする
- 奥側:季節物や保管中心の物を置き、手前からラベルを読めるようにする
ケースの色をそろえることより、どこに何があるか分かり、必要な箱を一度で動かせることが先です。中身を隠すために不透明なケースへ統一すると、今度は開けないと判別できなくなります。正面ラベル、用途ごとのまとまり、空きを残した配置を組み合わせます。
押入れの奥行きを一体で使うか、手前と奥へ分けるかによって、必要なケースも変わります。押入れ収納を奥行きと使用頻度で分ける方法では、幅・奥行き・高さの測り方と、手前・奥、上段・下段の役割を整理しています。ふすまを外して開口が広がっても、押入れ本体の内寸や奥の出っ張りは変わりません。
目隠しを付ける場合も、収納は整えておくほうが使いやすくなります。カーテンやのれんを開けるたびに箱が倒れる、ロールスクリーンの下端が荷物へ当たる状態では、開閉の手間が増えます。目隠しは散らかりを押し込める道具ではなく、整えた収納を必要なときだけ隠す仕切りとして考えます。
よくある質問
押入れのふすまを外すと、退去時に費用を請求されますか
外したことだけで直ちに費用が生じるとは限りません。退去時に元へ戻せるか、保管中に襖紙や縁を傷めていないか、契約書に特約があるかで判断が分かれます。国土交通省のガイドラインでは、借主が襖紙を毀損した場合、経過年数を考慮せず張り替え等の費用を負担する考え方が示されています。契約書の特約と管理会社への事前確認を優先してください。
外したふすまはどこへ保管すればいいですか
直射日光、結露、生活動線を避け、面へ物を載せない場所を選びます。清潔な緩衝材を挟み、倒れないよう安定させて立て、襖紙へテープを直接貼らずに左右・表裏・上下を記録します。適切な保管場所を確保できない場合は、外さない選択も検討してください。
長期間外したふすまが戻らないときはどうしますか
強く押し込んだり、ふすまや枠を削ったりしないでください。まず上下・表裏、敷居と鴨居の異物、ふすまの反りなどを確認します。それでも戻しにくい場合は、建具や物件側を傷める前に管理会社へ相談します。
目隠しはカーテンとロールスクリーンのどちらが向いていますか
左右へ大きく開けたいならカーテン、横の布だまりを避けて上へ巻き上げたいならロールスクリーンが候補です。ただし、どちらも固定方法、器具の重さ、枠への跡、操作に必要な空間を確認します。賃貸では見た目より先に、契約条件と管理会社が認める取り付け方法を確かめてください。
ふすまを外せば押入れの湿気やカビを防げますか
開口部が常に開くため空気の動きは変わりますが、それだけで湿気やカビを防げるとは限りません。部屋の湿度が高ければ押入れにも湿った空気が入り、収納物を詰め込めば奥に空気が届きにくくなります。換気、結露対策、収納物を乾かすこと、定期的な点検を組み合わせてください。
まとめ
押入れのふすまは、外せるかより、契約に反せず、傷めずに保管して戻せるかで判断します。 外すこと自体と、外した後の破損・変色・紛失を分けて考えるのがポイントです。
賃貸では、契約書の原状回復特約と備え付け設備の取り扱いを確認し、迷う場合は管理会社へ事前に伝えます。保管場所は直射日光と結露を避け、ふすまの面へ荷重をかけず、左右・表裏・上下が分かる記録を残します。
国土交通省のガイドラインでは、襖紙を毀損した借主の負担について、経過年数を考慮せず、原則として襖一枚単位で考える枠組みが示されています。クロスのように古さに応じた負担割合の減額を当てはめないため、長く住んだことだけを理由に負担が小さくなるとは考えにくい点へ注意が必要です。一方、特に破損していない部位を次の入居者確保のために取り替える工事は、ガイドライン上は貸主負担側の例として整理されています。
外した後の目隠しは、カーテン、ロールスクリーン、のれん、何もしない方法を、断熱、ほこり、原状回復への影響、設置の手間で比べます。どの方法でも、壁や枠へ跡を残さないかを別に確認してください。最終的には、契約書の特約と管理会社への確認を優先し、退去時に無理なく元へ戻せる方法を選びます。
参考資料
本文で確認した一次情報は、国土交通省の原状回復ガイドラインです。 個別の物件では、契約書と管理会社の案内を合わせて確認してください。
- 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(確認日:2026年9月1日)